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中国のハンセン病に対する日中学生たちの取り組み

教育機関としての大学の役割

ハンセン病の問題は医療の問題であると同時に、日本の場合、「らい予防法」という法律の問題でもあり、ハンセン病に対する絶対隔離政策という国家政策の問題でもあり、また差別・偏見という社会の問題でもあった。

これを時代順に見るならば、1943年の特効薬プロミンの開発に医療問題としてのハンセン病のメルクマールを見ることができる。これに貢献したのは医学界である。また1996年の「らい予防法」廃止および、2001年のハンセン病国賠訴訟におけるハンセン病快復者側勝訴に、法律の問題、国家政策の問題としてのハンセン病のメルクマールを見ることができる。これに貢献したのは、運動をおこした快復者やその支援者、さらにいえば法曹界である。

それでは今なお、解決にたどりつかない問題、つまりハンセン病に対する差別・偏見といった社会の問題に真正面から取り組まなければならない主体とはいったい、誰だろうか。

それに対して大きな責任をもっているのは、教育機関としての大学ではないかと思われる。従来大学とは、研究および教育を行うのが社会的使命と考えられてきた。しかしこれからの時代の大学には、研究、および教育を通じて社会に貢献し、その貢献を通してさらに研究、教育の質を高めていくことが要請される。さらにいえば、ハンセン病という社会の問題に対して、教育機関としての大学がいままでいかなる責任を果たしてしてきたかを自問するなら、それは怠慢を認めざるを得ないのが現状である。

先に紹介した中国のハンセン病の問題に関しても、国籍を問わず、若者たちは敏感に反応し、彼ら独自の発想でハンセン病に対する差別と偏見という非常に難しい問題に、きわめて自然体で取り組んでいる。それら若者の多くが大学生であることを考えると、教育機関としての大学は、彼らの活動をできる限りバックアップし、その教育的効果を高め、より充実した社会貢献につなげていく責任があろう。

近年、企業活動によっても、行政によってもうまく対処することが難しい問題にとりくむボランティアの活動に関心が高まってきた。さらにそのボランティアの力を活用するNGO・NPOにも関心が注がれるようになった。しかし特にわが国においては、その経済基盤の貧弱さから、NGO・NPOが思うように力が発揮し切れていないのが現状である。

そんな中、大学機関は、これらボランティア活動を支援・推進するにあたって、一般的なNGO・NPOにはない独特の資源を有している。中国のハンセン病問題に取り組むにあたっても、それを効果的に行うための資源が、大学には多く眠っている。

大学が社会貢献を行うにあたっての一番の資源は、学生というマンパワーである。好奇心と自由な時間、柔軟な発想を持つ彼らの力は、社会貢献の重要な資源である。

さらに、大学がもつ海外協定校のネットワークは、海外でプロジェクトを行う際のパートナーとして、非常に大きな力を発揮する。早稲田大学は社会貢献を目的として、2002年4月、学内機関として平山郁夫記念ボランティアセンターを設立させ、翌2003年度より、主催プロジェクトとして「中国ハンセン病療養所支援プロジェクト」を開始したが、そのプロジェクト実施の際も、現地NGO(漢達康福協会)の他、提携校である中国広東省の中山大学をパートナーとして、プロジェクト参加学生の募集、プロジェクト実施療養所の調査など幅広い協力を得ている。

さらにボランティア活動では、現地での活動に加えて、その活動を広く社会に喚起する広報活動が重要となるが、大学の場合、学内機関紙や卒業生向け機関紙など、大学の持つ広報媒体が大きな力を発揮する。

このように大学には、学生のマンパワーや、卒業生のネットワーク、独自の広報媒体、校内設備など一般のNGO・NPOにはない独自の資源を有している。これら資源を活かして社会貢献に乗り出すことにより、大きな効果を挙げることが期待できる。

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[西尾雄志(早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター)、原典:日中医学(財団法人日中医学協会、2005年5月発行)、2007年3月24日]

※この記事は、日中医学協会の許諾を得て転載したものです。
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