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定着村とはどういう村か? 〜金新芽氏の講演から〜


ハンセン病という暗い問題に耳を傾ける姿勢に感動します



 私は66年という人生を生きて来ましたけれども、私たちに起こっているいろいろな事柄は深く神様からのおぼしめし、摂理の下にあるのではないか、という事を信じている者です。
遥々と東京へ来て、皆様とお会いして、このような立派な大学で礼拝をして、自分の話をするのは恥ずかしいのですが、それも目に見えない神様のカ、計らいが確かにあるという事を信じて、神様に感謝を捧げます。ここにいる皆様、学長以下、諸先生方、その他の皆さんにお礼を申しあげます。
終戦前に、私は日本のある映画雑誌を見ました。そこには長島・愛生園の女医さんたちが、隠れた患者たちを探し歩いて療養所に案内したという紀行文が載っていました。それに有名な夏川静江という女優が主演をしてこの映画が作られたのですね。私はその映画は見た事はありません。映画雑誌の中にその映画の一部分が写真で出ていたのですが、それと一緒にある批評があったのです。それを私は忘れる事ができません。「戦争間際だったが、とにかくこの映画はよくできた」というその前書きの次に、「しかし、暗い映画であった」と書いてありました。私は「暗い映画」という、その言葉を今でも思い出しますけれども、やはり、この「らい」という問題、ハンセン氏病というものは暗い問題なのですね。決して皆が嬉しがる問題でもなし、自分を良くする問題でもないのです。やはり、皆が目をしかめ、顔をそむける、あまりそういう問題などには耳を貸したくないという暗い問題なのです。しかし、そのような暗い問題を、東京の真ん中にあるこの立教大学のキャンパスであからさまに出して、これと取り組み、私のような者を呼んででも何か一つ、ある何ものかを探そうという、その暗い問題を話してもらって、そこから何ものかを見極めようという皆さんの態度。お知らせを聞いてこちらに来て、耳を傾けて下さっている皆さんのそのような姿勢ですね、暗い問題に対する姿勢、それに私は非常な感動を受けるのです。人生というものはいろいろな暗い問題と取り組むという事に、一つのやりがいや価値があるのではないでしょうか。そのことに勇気を得て、私はここに立ちました。
今日は定着村の話をして下さいということなのですが、一時間というのは経ってみるとすぐですから、自分がどのくらい話せるかよくわかりませんけれど…。

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(1990年11月  立教大学での講演から)

[原典:「灯の村」菊池義弘/訳・編]


定着村とはどういう村か? 〜金新芽氏の講演から〜
金新芽 講演(1) ハンセン病という暗い問題に耳を傾ける姿勢に感動します
金新芽 講演(2) 自分たちの手で作り上げた定着村
金新芽 講演(3) 畜産の事業で発展した忠光農園
金新芽 講演(4) 定着村はやがて一般の村へ


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