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中国貴州省におけるハンセン病流行の現状
および予防・治療対策の研究

存在する問題

凱里ハンセン病村の倒壊寸前の家屋
凱里ハンセン病村の倒壊寸前の家屋

一部の幹部の不十分な問題意識、深刻な資金不足、皮膚病予防専門機関の合併、専門職員がハンセン病業務に携わることを希望しない、3つの地方自治レベルによる予防・治療ネットワークが整っていないなどの原因により、90年代中期より、貰州省のハンセン病予防・治療業務は全体的に後退状態にある。

1,指導部の現状認識の誤リ

ハンセン病はすでに数少ない病気であると認識しており、さらに多くの人、資金、物資を投入する必要はないと考えている。ハンセン病の予防・治療業務が長期で困難をともない複雑なものであることを考慮していない。これは、すでに基準に達している地方においてさらに顕著である。

2.管理システム

長年にわたるハンセン病の縦割りの管理システムはすでに現在の予防・治療業務のニーズと合致しない。衛生部門にだけ頼っていては全てのハンセン病問題を解決することはできず、衛生、民政、財政、障害者連合会などの部門が関与する総合的な管理システムを設立させることで、ハンセン病の制圧、変形障害の予防とリハビリテーション、高齢で障害のあるハンセン病患者や孤児で障害のあるハンセン病患者や極めて貧しいハンセン病患者の支援などの問題が根本から解決できる。

3.機関の現状

ほとんどの皮膚病予防専門機関は、行政改革により疾病予防センターに合併され、皮膚病予防に関する専門職員のなかにはすでにハンセン病予防・治療業務のポストから外れている職員もいる。さらには、県レベルの機関(疾病予防センター)によっては、ハンセン病予防専従の職員がいないところまである。また、地方の疾病予防センターの幹部には、ハンセン病予防業務を重視していないものもおり、予防・治療業務をさらに難しくしている。ハンセン病の抑制をさらに進めることは難しく、予防業務が深刻な後退状態に陥る危険性がある。

4.予算の情況

ハンセン病の予防と治療についての予算は年ごとに減少している(1995年の省全体のハンセン病予防業務の予算は40〜45万人民元であり、そのうち省レベルの機関は26万人民元、県レベルの機関は2千〜1万人民元であった。2003年の省レベルの機関のハンセン病予防業務の予算は18万人民元にまで減少している)。また、予防と治療についての予算は名目付きで配分されていないことから、地方によっては、ハンセン病予防の予算を他の疾病の予防や治療に用いているところもある。このようなことから、ハンセン病予防業務は正常に展開しにくいのである。

5.専門職員の現状

職場の条件が厳しく、交通手段も少なく、待遇は低い。新しい知識の取得と専門的な研修が不足しているため、業務のレベルが低い。ハンセン病に関する業務に携わるのを希望しておらず、責任感も低い。
 専門職員の不足により、貴州省においてはハンセン病組織病理切片作成およびその検査業務は長年にわたり実施しておらず、皮膚組織液の菌検査のような通常の業務さえも正常に実施していない地方もある。

6.予防・治療ネットワークの現状

ネットワークが整っておらず、予防と保健に関係する現場職員にハンセン病予防知識が欠けており、ハンセン病の症状、体の異変を識別することができない。このことから、ハンセン病の疑いのある情報を適時かつ有効に提供することができず、ハンセン病患者の早期発見や早期治療が難しい。このような情況により、周囲の人々への感染の危険が増加する。

剣河ハンセン病村で村人にフット・ケア指導を行う専門職員
剣河ハンセン病村で村人にフット・ケア指導を行う専門職員
7.ハンセン病村の現状

貴州省に現存する50カ所のハンセン病村は、その多くは50〜60年代に建設されたものである。補修の資金が不足していることから、多くの建物が危険な状態にあり、少なくとも半数のハンセン病村には、今でも道路が通っておらず、水や電気も通っていない。ハンセン病村の患者の80%以上に変形障害があり、平均年齢は60歳以上で、平均月収は30〜50人民元で、生活はとても苦しい。

8.健康教育

40年あまりの予防と治療および広報活動を経て、市民の大部分はハンセン病は「予防や治療が可能であり、恐ろしいものではない」ということを認識し、その他のハンセン病についての科学的一般知識も持っている。広報活動が十分でなく、特定の人々(特に少数民族地区)にはハンセン病の知識が無いため、ハンセン病患者を恐れ、差別し、ひいては排斥するような情況が依然としてある。ハンセン病患者は、奇形障害、貧困、治療費を払えない、排斥を受けるなどの要因により、物乞いや陳情に行く情況が近年は次第に増加している。社会の負担が増え、社会にとっての不安定要因の一つになっている。

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[著者:牟鴻江、柯偉、包夏、王穎(貴州省疾病予防コントロールセンター エイズ・性病・皮膚病予防治療研究所)、原典:日中医学(財団法人日中医学協会、2005年5月発行)、2008年12月30日]

※この記事は、日中医学協会の許諾を得て転載したものです。
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