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中国におけるハンセン病制圧の対策と現状

ハンセン病は、人類の健康を脅かす慢性伝染病の一種で、中国では2000年以上にわたって蔓延し続けている。ハンセン病は、しばしば青・壮年期に発病し、主に皮膚とその周囲の神経を侵し、障害をもたらし、労働能力に影響を及ぼすことから、社会的差別や偏見が非常に深刻である。中国は新政府成立以来、ハンセン病の予防治療事業を重視してきた。この50年間の中国におけるハンセン病予防治療の主な対策と措置、現状について以下に述べる。

予防治療対策と措置

中国におけるハンセン病の予防治療事業は、主に以下の予防治療対策と措置を採用している。

1.「積極的に予防治療を行い、感染を抑える」という原則を確定※1

1957年に、「全国ハンセン病予防治療計画」を制定し、主に全国民の一斉検診と追跡調査を行い、大多数の患者を早期発見し、集団収容することで、感染源を隔離した。ジアフェニルスホン(DDS)を用いた治療が広く行われ、抗ハンセン病薬による長期的、かつ十分な服用量による規則的な治療が保証された。中国は、当時の社会的経済状況に基づいて「ハンセン病村」を創設し、感染患者をハンセン病村に集め、隔離治療を行うと同時に、患者はそこで生産活動も行い、定期的な薬の服用を保証された。1950年から1970年代にかけて、中国ではDDS単剤治療で30万人以上のハンセン病患者が治癒した。

2.県(市)を単位とするハンセン病制圧の総合的な予防治療対策の研究※2

1959年から1965年に、江蘇省海安県と広東省潮安県で、県を単位とした皮膚病(ハンセン病)予防治療所(ステーション)を設立し、予防治療ネットワークを構築した。予防治療スタッフを育成し、ハンセン病の予防治療に関する知識を普及させ、患者を検査により発見し、全面的な治療と訪問観察を行い、その経験を全国的に普及させた。同研究は、中国が1980年代初期に、県(市)を単位として制定した検査政策およびハンセン病根絶指標の中で、有病率と発見率を向上させるための基礎を築いた。

3.「全国ハンセン病予防治療管理条例」の制定

1981年、中国政府は、2000年に全国のハンセン病制圧を達成するための有病率(10,000人当たり0.1人以下)と新患者発見率(10,000人当たり0.05人以下)の目標数値(すべて県(市)を単位とする)(2)を打ち出し、「全国ハンセン病予防治療管理条例」を制定した。これは、その後1991年の第44回WHO総会で採択された全世界で公衆衛生問題としてのハンセン病を2000年までに制圧するという決議における、国家を単位とした有病率(人口10,000人当たり1人)の目標数値と比較して、中国の目標数値基準は少なくとも10倍以上も厳しいものであった※3

4.予防治療における課題と研究

(1)マウスの足裏を使った感染モデルの実験方法を確立し、DDSの薬剤耐性検査等の研究を実施。
1987年、中国におけるDDS耐性病例の出現が初めて確認され、1981年には、一部地域において、二次的なDDS耐性の有病率が5.1%※4と報告された。これに続いて、新規に発症した多菌型患者の内、原発性DDS耐性の有病率が24〜44%※5, ※19に達したことがわかった。この結果、中国において引き続きDDS単剤治療でハンセン病を制圧することは非常に困難であることが示され、多剤併用治療(MDT)を普及させるための根拠となった。

(2)ハンセン病多剤併用治療(MDT)のフィールドの研究の実施。
1981年11月、中国の専門家はWHOのハンセン病制圧計画科学療法研究グループによるMDT方案の立案に参画し、1982年、WHOが提唱するMDT方案の治療効果および実現の可能性について観察を行った※6。この結果、MDT方案は有効率が高く、治療効果も良好で、再発率も低く、重篤な副作用がないことが明らかになった。中国衛生部は、1986年、全国でMDT方案を普及させることを決定し、現在に至るまで、全国で8万人以上の患者がMDTにより治癒または完治している。MDTは、中国のハンセン病制圧の鍵となる対策である※7

(3)ハンセン病の社会医学研究の実施
ハンセン病を制圧するための社会―医学―心理モデルを打ち出した※8。ハンセン病の予防治療事業を更に促進するために、中国は、1983年、江蘇省でハンセン病の社会医学調査研究を行い、ハンセン病の予防治療対策と措置の科学性、効果および存在する問題について全面的な分析を行った。また、調査によって明らかになった問題と社会的差別と偏見に焦点を合わせて、ハンセン病の健康教育に全力で取組み、ハンセン病は「予防可能・治療可能」な病であるという見解を宣伝するよう提案した。衛生部は、1985年全国ハンセン病宣伝活動会議を開き、ここで長年にわたってハンセン病がラジオやテレビ、ニュースメディアで宣伝を禁じられてきた“禁域”を打破するべく、社会全体がハンセン病の予防治療に関心を持ち、ハンセン病患者への理解を示すよう呼びかけ、衛生主管部門の管理政策に対する根拠を提示した。

(4)漢方治療薬の発見
漢方薬の雷公藤がハンセン病治療に有効※9であることを発見し、ハンセン病の抑制と障害の減少に新しい方法を提供した。

(5)ハンセン病流行監視測定システムの構築※10
全国におけるハンセン病流行の予防治療状況を適時に把握し、ハンセン病を制圧するための予防治療効果を正しく評価するために、衛生部は、1990年から全国で県(市)を単位としたハンセン病流行状況に関する登録・報告システムのデータバンクを構築し、1949年から今日に至るまでの全国60万件以上の病例登録および訪問看護資料を集めて、省(市、区)を単位とした全国的なハンセン病の病例個人資料データバンクを構築、かつこれに対応するコンピュータソフトを開発し、全国での運用を推進している。これらの資料の分析を通して、全国のハンセン病予防治療状況を把握し、最近50年間の国内におけるハンセン病の流行および再発状況を客観的に総括し、第15回国際ハンセン病大会で、全国のハンセン病の制圧状況の報告に対して、信頼できるデータを提供することができた。

(6)海外の政府・非政府組織との国際協力
海外の国際政府と、WHO、ベルギー政府、および国際ハンセン病協会、国際抗ハンセン病協会連合会、日本笹川記念保健協力財団、ベルギーダミアン基金会、オランダハンセン病協会、アメリカハンセン病協会、並びにイタリア、ドイツ、韓国および中国香港、マカオ、台湾地区の団体と有志の参加や支持を含む非政府組織と協力して、ハンセン病撲滅キャンペーン(LEC)およびハンセン病による障害の予防治療とリハビリ事業等を展開した。

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[著者:李文忠(中国医学院皮膚病研究所)、原典:日中医学(財団法人日中医学協会、2005年5月発行)、2008年12月30日]

※この記事は、日中医学協会の許諾を得て転載したものです。
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