韓国における定着村事業の歩み
癩患者登録診療の細則制定
一方、1963年に入っても引き続いて癩患者の登録業務を行なった保健社会部は、4月の始めまでに全国から27919名の癩患者登録を受けた。この中で、在家患者と私立収容所を含めた各保健所登録総数は17515名で、小鹿島病院など国立病院が8643名、大邱愛楽保健所など私立癩患不具者収容所は1621名などだった。これに引き続いて保健社会部は5月1日、登録診療細則を制定し、各市・道、及び関係保健医療機関に指示した。
その重要内容は、
(1) |
それまで保健所で登録診療を受けるようになっていたのを変更し、患者が希望する全国の全ての医療機関で診療を受けられるようにする。 |
(2) |
登録患者の罹患状態は、絶対に秘密を守るようにする。 |
(3) |
患者の要請なき家庭訪問は禁止させる。 |
(4) |
2ヵ月分の主治医薬品を1回で支給するようにする。 |
(5) |
特殊な場合を除いて、診療費は一切無料とする。 |
このように保健社会部が「癩患者登録細則」を制定したのは、1962年8月から実施し始めた癩患者登録業務が、満足の行くものでなかった事に起因するものであり、この細別の制定によって癩患者登録業務を活発に進めさせる事にその目的があった。
この細則は、登録・診療・主治薬品の需給・報告・癩病啓蒙宣伝など、大きく5項目に分かれているが、その内容をさらに詳しく見れば、次のようになる。
(1) |
全ての癩患者は、自分の希望する医療機関において治療する事ができる。したがって、全ての医療機関は患者居住地の差別なく登録診療を実施する。 |
(2) |
登録患者の身分上、秘密を厳守しなければならない。 |
(3) |
登録カードの住所は市・区・郡単位でだけ表示するようにし、伝染性が多い患者、不規則に治療を受ける患者などに対しては、詳細に住所を記録する。 |
(4) |
毎月1回、一定の日時を決めて診療する事を原則とし、患者の要請にしたがって随時診療をする。 |
(5) |
集団診療所の患者診療は登録を受けた毎月1回、定期的に出張診療する。 |
(6) |
特殊な場合を除外して患者治療は一切無償とする。 |
(7) |
患者の居住地との距離関係、または家庭の暮らし向きなどを考慮して、毎月通院治療をするのが困難な患者には、2、3ヵ月分の主治薬を一時に支給し、患者たちの便宜を図ってあげる。 |
(8) |
各市・道は患者登録数によって一律に行なう薬品配定を止揚して、その診療実績にしたがって配る。 |
(9) |
登録皮膚診療所、及び移動診療班の所要主治薬品を各市・道において配り、特殊皮膚診療所以外の病院で癩患者を診療する場合には、当該病院所在地の保健所において所要する主治薬品を配る。 |
(10) |
特殊皮膚診療所は、毎月末日現在の患者の状況を次の月の10日までに保健社会部に報告し、3月分の報告時には現在の登録診療療患者全員の登録カードの副本2通を添付して提出する。 |
(11) |
保健所では特殊皮膚診療所、または移動診療法に登録された患者以外の患者登録を実施し、その登録状況を毎月末日までに該当の市・道に報告し、3月分の報告時には、登録患者全員のカードの副本1通を添付して提出する。 |
(12) |
市・道は各保健所からの報告状況を総合し、毎月末日現在の状況を次の月の10日までに保健社会部に提出する。報告書には保健所から提出された患者登録カードを添付して保健社会部から送付する.患者登録カードには患者居住地別に分別し、該当の市・郡保健所に送付する。 |
(13) |
保健所長、または公医は管内の学校と各部落を臨時巡回し、座談会、または講演会を開催して、癩病に対する正確な啓蒙とともに癩患者全員の登録治療にカを注ぐ事。 |
癩患者登録診療細則の制定
1963年5月1日、癩患者登録診療細則を制定した保健社会部は、これとともに4月12日付で、結核・癩病・防疫なと保健医療機関に従事する医師・看護員・医療補助員などが、公務員として勤務中に病菌に汚染される憂慮がある者に対して、危険手当の支給を主要骨子とする公務員諸手当を支給するという規定を改定公布し、5月3日、この施行を各市・道に通達した。
閣令1271号によって公布されたこの規定を見ると、
甲種として、
(1) |
防疫・保健関係の治療機関、または研究機関で放射線を利用して診断・治療・撮影・研究試験に従事する者。 |
(2) |
防疫研究機関で伝染病関係の予防薬の生産実験に従事する者。 |
(3) |
人獣共通の伝染病細菌、及び病専を取り扱う者。 |
(4) |
矯導部分で癩病、結核患者の橋導、及び医療に従事する者。 |
乙種として、
(1) |
結核・療病など、伝染病治療機関で患者に対して、直接治療や看護に臨まないが常時接触する業務に従事し、汚染する憂慮がある者。 |
(2) |
伝染病研究機関で伝染病、その他の疾患に関して直接扱いではないが、これに汚染される憂慮がある業務に従事する者。 |
(3) |
癩病未感染児童室、体育機関で常時これに接触する者。 |
(4) |
家畜疾病の診療、及び廃水検案を担当する者。 |
その次に、丙種として、防疫・保健部門で防疫船に乗務する船員など、となっている。
このように療病などの慢性病管理にカを傾けた政府とともに、大韓癩協会も新しい患者の発見事業、定着場拡充事業などにさらにカを傾けた。そんな中、5月14日、保健社会部の慢性病課長として癩協再建にカを傾け、また行政府で慢性病管理業稗を引き受けていた崔始龍氏がWHOの招きでシンガポール大学で公衆保健学の研究をするために保健社会部を離れた。
[
前のページへ][
次のページへ]
[原典:「福祉」(大韓癩管理協会発行、1974年11月から1976年12月まで連載)、日本語原典:「灯の村」菊池義弘/訳・編]