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韓国における定着村事業の歩み

癩病の歴史
古来より古今東西を問わず、療病は天刑の病として、すべての人たちから嫌悪の対象とされてきた。
世界的に見ると、癩病に対する記録は聖書の旧約時代より目にする事ができ、東洋においては、紀元前202年、中国の「傷寒論」という医書に「痂癩」という記録を見る事ができる。

高麗時代
これ以後、時代は下って1058年から1059年(高麗、文宗12、13年間)には、その「傷寒論」を始めとした中国の医書八部が韓国に入って来て、翻訳され使用されていたが、今日、その医書は既に無くなってしまって残っていない。しかし、当時の医家たちはこの「痂癩」に対して充分に理解していたと思われる。
その後、西暦1235年から1251年(高麗、高宋時代)に刊行された「郷薬救急方」には「癩」という名称はなく、「天疱瘡」、「楊梅瘡」「淫瘡」等の言葉が見られるのだが、この悪瘡がもっとも悪質な「瘡」を意味するとすれば、もしや癩病もその悪瘡の中に含まれているのではないかと推測する事もできる。
したがって、この時代に癩病があったのかどうかはわからないが、それ程には扱われていなかったために、文献的に見て、この「痂癩」に関する区別が、明瞭にはなされていなかったものと思われる。

李朝時代
その後、李朝・世宗時代(西暦1433年)に刊行された「郷薬集成方」の中に初めて「大風癩」という言葉が見られるが、それは明らかに癩を意味するものである。この「郷薬集成方」は高麗末期の「三和子郷薬」を広く引用したものであった。このような文献から見ると、韓国における癩病は高麗末期になって初めて、医家たちによって明らかにされたものと見られる。したがって、西暦1236年から1351年の間には癩病の大きな流行はなく、これより50年後である15世紀の末ごろから知れわたるようになったものと思われる。
また、「李朝実録」によれば、1412年から1622年までの約200年間にかけて、癩病が流行したと記録されている。1450年ごろの世宗時代には、済州島に癩患者の療養所を作り、薬を与えながら治療したとも記されている。
そして、これ以後になって所々に癩患者が問題とされる記録が多くなるが、しかし、この癩患者たちを助けたという記録はほとんど見られない。それは、李朝が政治的な内憂外患をいつも抱えていたせいで、この者たちに目を配る事ができなかったためと思われる。

日帝時代
李朝末から日帝時代初期にかけてキリスト教が入って来て、この地に根を下ろし始めた1910年代になると、宣教事業のために韓国へやって来た宣教師たち、マッケンジー(1909年)、ウィルソン(1909年)、エルヴィン(1912年)フレッチャー(1912年)等が宗教的理念を基にして、癩患者のための救癩事業を始めるようになり、これによって韓国における救癩事業が本格的に開始される事となった。
この頃は、日帝が韓国を、まさに根こそぎ飲みくだそうとしていた、そんな時期だった。このような状況の中で、外国人宣教師たちによって救癩事業が始められたわけだが、それは結局のところ、韓国での救癩事業は、韓国人の手によるのではなく、ある意味では、我々とは何ら関係がない外国人の手によって行なわれたともいえる。
この西洋人宣教師による活動は規模としては小さなものであったのだが、韓国で救癩事業が起こると「韓国人の生活向上のため」という体のいい名目で韓国を支配していた日帝の朝鮮総督府も、国際的な対面上、そのまま挙手傍観しているわけにはいかなくなった。そして、そのような致し方ない理由から、朝鮮総督府は1916年、小鹿島に「慈恵医院」を作り、京畿遭の警察局衛生課長であった周防正季を、院長として兼務登録した。
外国人宣教師と日帝によって本格的に救癩事業が始まると、実際の仕事に従事する人たちは、より幅の広い救癩事業のために組織体を作る必要性を感じるようになった。1929年、当時、麗水で救癩事業をしていたウィルソン牧師の助手として働いていたチェ・フンジョン牧師も、その中の一人だった。
チェ牧師はこのような組織体の必要性を痛感し、ウィルソン牧師を始めとした様々なウィルソン牧師を始めとした様々な救癩事業家たちに先駆けて、組織の基礎を固める一方、韓国の指導者的役割を担っていたユン・ジホ、安在鴻、ソン・ジヌ、金性洙などを中心として「朝鮮癩病恨絶研究会」を組織し、その趣旨を広く世に知らしめた。この「朝鮮癩病根絶研究会」は韓国では初めて組織された民間救癩団体であり、その意義は大きかった。

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[原典:「福祉」(大韓癩管理協会発行、1974年11月から1976年12月まで連載)、日本語原典:「灯の村」菊池義弘/訳・編]
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