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宇宙世界通信 第16号 1998.3発行



目次



西村麻里--耶馬渓
(農作業あれこれ・フリースクール計画の話し合い)

宇宙★--作業所ばなし・2

宇宙世界通信 第16号

耶馬渓           西村麻里



2/1〜2/17まで、九州の大分県にある耶馬渓に行ってきた。そこでは、FIWCキャンパー鈴木さんと家族、鈴木さんと共同作業をしている荒牧さんとその家族がいる。そこでは有機農業と卵用の鶏を飼っている。共同体名は明日庄という。

農作業のあれこれ

ビニールハウス
ビニールハウスを建てた。「ハウスにビニールを張ろう。」と言われた時「はーい。」と言ったものの(ハウスって一体どうするの?)と思っていた。あんな大きなもの自分の手にはおえないと思った。  そのビニール張りとは、大きなビニールの端に何本か紐をくくりつけてハウスの骨組の一方から4.・5人でひっぱって反対側まで覆う。とても大きな1枚のビニールは重い。さらに風が強いとビニール一杯に風を受けて大変なことになる。  上手く張れないと困るかなと思い「風のない時にやりましょう。」と言うと鈴木さんが「風のあるときのほうがおもしろいのに。」と言った。その言葉は私にはとても新鮮だった。合理的に張ること、手間をかけずに張ること、楽に張ること、そんなことばかりがすぐに浮かんできてしまう。もし強い風にあおられてなかなか上手く張れなかったとしても、風の力みたいなものを感じながら作業するのも悪くないと思った。そう考えるとわくわくした。  何か物事をするときに、出来上がるまでの全てを合理的にすることも一つの方法だし、課程も楽しむという方法も一つだと思う。その二つは時と場合によって使い分けられるのだろうけど、自分の中にどっちの選択肢もある方がいい。

便利さと豊かさは違う。以前そんな話しをしたことがある。今って物質的にはとても豊かになり便利になったけれど、それは本当の意味での豊かさではないと思う。本当の豊かさってそこに感情が付いてくるのだと思う。便利すぎると何の感情もわかなくなる。

収穫
大根、かぶ、ほうれん草、ちんげん菜、水菜、里芋、じゃがいも。冬野菜の収穫をした。だいたい、じゃがいもがどういうふうにできるかも知らなかった。実のように木になっているのかと思っていたものだから、最初にじゃがいも畑につれていかれたときは驚いた。土を掘るとゴロッと顔を出す、宝が見つかったような気分になって嬉しかった。そのほかの野菜もスーパーで見るときの状態と違う姿に、驚いたり感動したりした。
紅彩帯という中国野菜がある。名前の通り茎の部分が赤紫色をしていて黄色い花をつける菜の花の一種だ。赤紫と黄色の色合わせが華やかで、そこにいると春が一足先にきたみたいで温かい気持ちになる。いろんな歌を歌いながら摘んだ。食べてもおいしかった。

フリー・スクール計画の話し合い
「農業と子供のことがしたかった。」という荒牧さんの夢が少しずつ進み始めている。鈴木さんと荒牧さんの家とのちょうど間くらいの土地を使って何かをしたいと思っている。例えば不登校の子の居場所となるような所。不登校の子たちばかりでなく色々な人が集まり、農業や自然を通して生きる力や生きる知恵を学べる場にしたい。
不登校になる理由って人それぞれなのだろうけど、自分の学生時代って楽しくなかったという事だけは覚えている。私にとって学校は教科書の勉強をするためのところだった。だから勉強ができるかどうかだけが人間の価値を決める基準だった。それから先生に好かれることが大切なことだった。先生の言うことを鵜呑みにするものだと思っていた。自分で何かを考えることをしなかった。いつも楽しくなかった。友達がいないと感じていたし孤独で寂しいと感じていた。でも、それが普通なのだと思っていたし、人とつきあうのが恐かった。

神戸の震災をきっかけにcampに参加して人と一緒に何かをすることのおもしろさを知った。取り繕わずに自分の考えや思いを伝えるようになった。人に自分のことを分かってもらうことが嬉しかった。そして、自分の周りの人の色々な話を聞いた。気がつくと以前の孤独感はなくなっていた。  何でもそうだろうけど、「こうなりたい」と思うのだったら自分自身がそれに向かって動かないと始まらないのだ。自分は何も動かずに何も話さずに友達が出来るのだと思っていたらしい。
学生の頃すごく寂しかったから、「空虚な感じがする。」なんて言う今の子たちの話を聞くと「何とかならないかな。」と思う。寂しい人も、楽しい人も、めでたい人も、とにかくいろんな人がいられる場所を作ることができたらいいと思う。
いろいろと考えられた日々でした。

宇宙世界通信 第16号

作業所ばなし・2          宇宙★



おいらの通っている作業所は江戸川区にあるゆうほ舎というところで、おいらはそこで、働いたりめしをくったり遊んだりくっちゃべったりしている。以前「作業所ばなし・1」で紹介したときはゆうほ舎は「いこいの場」だったんだけど、今は「何でも屋+いこいの場」になった。「作業をしたい」という人と、「でもきぞんの作業所みたくなったらつまらない」という人が話し合っているうちに、「何でも屋」になった。  内容はいろいろで、包丁とぎ、自転車修理、ハーブ小売り、運搬、門松づくり(年末限定)、そうじ、その他、できることは何でもやっている。安いから依頼は近所その他から入ってくるけど、働いている人のことを考えると(てゆうか俺も働いてるんだけど)もうすこし稼げるといいとは思う。
でも個人的には今の「みんながケチってる状態」は好きです。消費者が消費者でなくなって、生産者がさく取される存在ではなくなって、そのかわりに大企業とか国が苦しめばいいと思ってたから。
だから逆にそういうシビアな季節に、わりと需要があることをできるというのはうれしい。金額が問題なのではない。ずっと続けていくということが重要で、地域という独自で小さくて弱いものにたすけあう心の強さというものをもてるとすれば、そういうひとりひとりのずっと続けていく、自分の領分で、ということしかないからで、それがなければきっと日本もおしまいだよね。
みんながすこしずつできる範囲で参加できる、そんなペースでやっていって、ゆうほ舎の「何でも屋」をどうにかして支えていきたい。わりと包丁とぎなんて毎日入ってくるときもあるし、急ぐことは何もない。
今のところは「いこいの場+α」でいいや。やっぱり少しずつじっくりと考えていくのがいいよねえ。どうしても利己的にはなってしまうんだけど、おいらは。


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