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金村農場

和合と団結で跳躇の翼を広げる 金村農場

北の原野に向けて広がる明るい青空が冬の終わりを知らせてくれるように、まだ冷たさを感じさせる京畿道・ハジュ郡に立つ金村農場では、その寒さを物ともしないような熱気に包まれていた。行政区域上では自然部落として発展を重ねている金村農場は、それまでに現在享受している平穏からはとても想像もつかないような険しい道程を歩んで来た。
悲惨な六・二五動乱(朝鮮戦争)では、自由を守るためにたくさんの若者たちが犠牲となった。そして、今でも敵軍の砲声が遥かから聞こえて来るような錯覚に捕われる周辺環境が過ぎし日の厳しさを教えてくれる。しかし、現在は過去のそのような傷を忘れて、村人たちは汗水を流して熱心に働いている。金村農場で見わたすと長々と林立する畜舎、坂道の上にそぴえる教会、きれいに化粧された村の会館、そして、建築中の新しい建物の数々が互いにほどよい調和を織リ成している。「暗かった我々の過去は消えた」と語ったある幹部の言葉通り、暗い面など全く伺い知る事などできないくらいに、現在の金村農場は大きく発展して行っている。パンに飢えてさ迷う羊のようにあちらこちらを彷徨しなければならなかった村人たちの心にも、自信を植え付ける条件がこれからも一つ、また一つと増えて行く事だろう。
狭い土地を最大限に浦用して高い所得を上げている金村農場では、現在、入十余世帯三百余名にも登る多くの人々が生活している。現在、彼等が飼っている家畜の数は、鶏が十五万匹、豚が三千余預、貧富の差が多少あっても各家庭ごとに皆一様に家畜を飼っており、この点では団結がうまく行っているといえる。特に飼料を購買する時にも、毎月六百トンずつ一つの会社から共同購入して使用しているため、価格と品質の面で完全に保証を受け、生産費の節減においても多くの効果を上げている。全国の定着村の中で、規模の面から見ると、まだ中の上くらいにすぎないが、ここは債務のない全くの純資本でもって運営されており、実際の採算性はとても高い村であるといえる。組合員に対する徹底した貸し付け金の管理とその便益計画のために設立された畜産組合も、どこにも引けを取らないような着実な基盤を築いて行っている。そして、このように安定した生活を営めるようになるまでには、指導者たちの目に見えない努力と知恵があった。
一九七〇年代の末から、クォン・ジョムヨン長老を始めとしてパク・ヒョンジユン、チョン・ウォンジョン、チョン・ミンヒ長老などが村の運営体系の主軸となって働いて来たが、それは現在でも全ての面における基本となっている。村人たちの前に立って仕事を処理して行くよりは、心を一つにしていつも裏から盛り上げてあげる事に心掛けた彼等の謙虚な指導理念は、今日の金村農場を作り上げるための大きな契機となったと見る事ができる。
わずか二年前までは、心の余裕など持てないくらいに忙しい毎日を送っていたが、経済的な安定とともに和合の雰囲気が生まれ始め、金村農場にとって今やそれは何ものにもかえられない貴重な財産となっている。現在、農場の代表として働いているチョン・ウォンギョン氏は、「民主化時代に歩調を合わせ、我が農場の全ての行政も村人の自律性を尊重している」「他の農場で問題になっている入居・移住の件が、我が農場では自由に保障されており、ハンセン病快復者の仲間はもちろんの事、一般人たちの場合も希望者に限って、最大の便宜を図っている」と語る。
このような自然部落化運動がだんだんと拡散して行く事で、数年前からは村人が一般の人たちと自然に和合し、共に生活するようになった。都心から車でわずか三十分という円滑な交通網と汚染されていない滑らかな環境が養鶏事業をする上において適しているとして、京仁地域のハンセン氏病快復者たちが続々と入居を希望して来ており、ここは遠からず大農場として発展して行くであろう事が見込まれている。さらに最近では畜産不況と畜産物輸入開放に備えた専業の必要性が叫ばれ、金村農場の一部を農
工団地に発展させようという動きが出始めている。現在、村の開発委員長を勤めるキム・ヨンホ氏は、「中小企業誘致のために多角的な交渉を繰り広げている」と語る。近隣にあるコウン農場の例を見ても、このような計画は決して漠然と立てられたものではないと思う。「食べて遊んでいても使う金が生じる」というような非生産的思考を招く事は危険であるが、農工団地の育成によって資本の投資効果を高めるという村の希望的将来設計は必要な事である。また、農場の行政もそれまでの執行部主体を脱却して畜産組合を中心にした管理運営へと転換して行っているため、その機能が拡大されば住民たちの結びつきをさらに深めるための良い媒介となって行くだろう。
畜産組合の創設当初から組合長職を担っているキム・ヒョンシク氏は、幅広い対活動を通して各種畜産情報を収集して、それを効率的に応用し、常に先頭を行く畜産組合へと引っ張って行っている。さらに地域の畜産家たちとも活発な交流を行ない、単位農協とも円滑な関係を結びながら、他の定着村では思いもよらなかった地域直販設計を行ない始めたという。
現在、一日当たり六百万個程度を消費するソウルの鶏卵市場によって、全国各地の中小都市では鶏卵の需給バランスがうまく行かない状況が生じている点を考慮すれば、地域販売のための直販場の設置は、より次元の高い考え方であるかもしれない。いつもきれいで新鮮な鶏卵を生産者価格で消費者に供給できるのはとても望ましい事であろう。
金村農場・畜産組合の常務理事をしているユ・ソンジェ氏は、「鶏卵流通上の煩わしさと商人の無秩序な横暴が大きな心配の種であったため鵠卵直販場を構想するようになった」と語る。まだ実験段階であるため具体的な答えは固まっていないようであるが、全国の定着村が地域農協や畜協を通して、このような問題を実現させて行くならば、商人たちから受ける被害を減らし、消費者も保護して行ける理想的な事業となる事だろう。
このように金村農場は地域的な特性を最大限に生かし、実務責任者との有機的な協力を通して、公益のための基盤を完璧に固めて行っている。また、政治的な反目や葛藤を目にする事もなく、純粋で多情な雰囲気の中で農場は持続的な発展を積み重ねて行っている。
金村農場が位置している金村邑は祖国を分断している休戦ラインさえなければ、三千里山河の中心地
域として今よりもさらに発展して行ける条件を多く備えているのだが、現実はそのようになっていない。しかし、そんな中でも誠心誠意をもって尽くして働いて行けば、その価値はさらに輝き、新鮮さを増して行く事だろう「人生における幸福の尺度は富ではない」という言葉は理想としては叫べるけれど、現実においてはその富を貯えるために日々汲々としているのがまさに人間の欲望のようである。富と人格と真の幸福を一様に兼ね備えた金村農場へと今後とも発展させて行くためには、指導者たちの努力だけでは限界があるだろう。全村民が今日のような和やかな雰囲気で協力し合い、互いに団結して行く時、初めて真の実りを得る事ができるようになると思う。

[原典:「韓星」(韓星協同会発行)、日本語原典:「灯の村」菊池義弘/訳・編]

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