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ヨムグァン農園

安定した発展を重ねる ヨムグァン農園

私たちが生きている国土は、随時、変化と発展を重ねている。ヨムグァン農園が位置している所も、現在は城南市と境界を接しているが、わずか二十年前までは人跡乏しいひっそりとした片田舎だった。傾斜を成した野山には多年草の草木が生えているだけで、三月が近付いても白い雪が溶けずに残っているような全くの陰地である。たとえ他の村々とは距離が離れていても、村の横を流れる小川には、滑らかな水が冬の間に凍て付いた氷を削って音をたてながら流れているごく平凡な田舎である。
一九六五年五月二十二日.テグ・愛楽保健病院から病が治って退院した六世帯の人々が当局からの支援の下、始めてこの地にやって来た。春を迎え、山と野原が一面、新春の気運でいっぱいになる季節、野山を耕しながら生きて行くための土壌をなんとか手に入れようとしていた彼等にとっては、たとえそこが陰地ではあっても世の中のあらゆる物を所有したかのような気分に胸を膨らませた。キリストヘの信仰をもって生愛の全てを神様に預け、新しい生を開拓し始めた彼等の前には、困難と苦痛もたくさんあったが、兄弟愛によってお互いを慰労し合いながら問題を賢く克服し、畜舎を建て、鶏を飼い、土地を耕し、糧穀を育てながらせいいっぱい生きて行った。

*ヨムグァン農園の新しい変化
その後、わずかだが政府による政策的な支援が得られるようになり、比較的広い土地が手に入ると、あらゆる所からたくさんの人々が集まり始めた。当初、六世帯で始まったのが、やがて四十四世帯にまで増え、成長を重ねるに従って増えた彼等の土地も、だんだんと肥沃になって行った。さらに、家畜の数も日増しに増え始め、それに比例して所得も高くなり、農場内の明るい雰囲気と自立へと向かう熱望は、近い内に必ずや成就するかのように思われた。
また、この時、村ではもう一つの変化もあった。それは、後に一九七〇年代中盤に入ってから急に有名になったヨムグァン医院の開院だった。最初は、それまで農場の村人たちの健康を世話していたナ・ジョンデ氏を始めとする数人の人々が、店を構えて薬剤士を招き、訪ねて来る外部の人に薬を与えていたのだが、その薬に対する効果がだんだんと認めらて来たため正式に薬屋を始めるようになった。そして、山奥の人里離れた寂しい所から噂が噂を呼んで、ヨムグァン薬局の事は近隣地域から京畿・ソウル地域へ、また全国的へと広まるようになった。ここに訪ねる人々は全てが悪性疾患の長期療養患者たちで、主に皮膚疾患で苦労する人々がその上位を占めていた。これを受けて、村の指導者として働いていたチョン・ヒョン氏を始めとする中堅人士たちが集まり、これからの長期的な青写鼻を立てる事にした。何よりも必要な事は今よりもっと良い施設と立派な医師、そして良い薬を備える事であると考え、専門家たちを訪ねたり、また噂を頼りに大学にまで出向いて効果的に対応して行こうと語り合った。
「志がある所に道が生まれる」という言葉のように、真心を込めた祈りと堅実な生活によって、まもなく天の祝福がヨムグァン農園の上に降り始めた。薬局から病院へとその規横を拡大し、学術経験と臨床経験によって皇宮な医療陣を配置できるようになると、全国から多くの人々が集まって来た。最初は全ての村人が畜産を通してどうにか生計を営んで行けるような状態だったが、病院収入の増加によって施設が拡張され、それに伴って村人たちにも少なからぬ利益が配分されるようになると、生活が潤い始めた。一方、創般期の病院運営に大きく寄与したチョン・ヒョン氏とチェ・ジョンソク氏は、交通の不便さを解決するために、城南市や水原市で運行していた京畿交通と接触を持ち、病院まで路線を延長してくれるよう要請した結果、これに成功した。
一九七〇年代中盤に入ってからは、当時のソウルでさえ珍しかった皮膚科専門医を三、四名ずつ確保して診療にあたらせ、肛門外科、放射線科、臨床病理室などを保有する準総合病院へと発展して行った。その後、一日に千名にも適する患者たちを診療するためにどのようにしたらいいか苦慮するくらい病院の規模は日増しに拡大し、やがて、マスコミに一度も広告を出した事がないにもかかわららず、ヨムグァン医院は国内最高規模の皮膚専門病院へと発展して行った。

*ヨムグァン医院の施設と運営
現在、国内でも十指に入るくらい、多くの患者たちが訪ねるヨムグァン医院は、施設面から見ても最新の機器と科学的な装備をたくさん備えている。そのヨムグァン医院を訪ねる患者たちの九十パーセントは皮膚科患者であるが、彼等はそれまでに何回か全国的に有名な薬局や病院へ通ってみたにもかかわらず、患部が既に悪化していて、薬に対する耐性が弱い場合が大部分だという。そのために検査室の施設や治療施設では、病気の発生原因を調べたり治療をする事ができないとヨムグァン医院医療陣は明らかにしている。しかし、現在、ヨムグァン医院では国内の大学病院の内、何カ所かだけが保有しているピユーパ(紫外線調査治療施設)施設を始めとした各種検査装備を備えている。特に、十年近くヨムグァン農園の村人たちと息を合わせて一緒に病院を引っ張っているキム・ユンウォン院長は、病院運営及び発展に大きな役割を担っている。慶北医大を卒業して皮膚科専門医として癩病研究院に勤務した経験もある彼は、ヨムグァン医院の求心点となって、全国から集まる多くの患友たちの世話をしている。また、ヨムグァン医院では病院運営面における診療、及び投薬などは院長を中心とした運営委員らが直接間接に関与しているが、より安い医療費の策定のために日々、努力しているという。

*ヨムグァン農園を引っ張って行く人達
他の定着村に比べて歴史は短いけれども、全国的に見て最も先頭を行く経済力と文化を有しているヨムグァン農園では、代表者に責任を一任し、農場住民たちが積極的にそれを後援するように運営されている。前に述べたチョン・ヒョン氏、チェ・ジョンシク氏、他に現在代表者であるイ・ギルドン氏を始
めとして、韓星協同会の会長として在職しているユン・ホンギ氏、ソン・ボンスル氏、チェ・ヨンギュ氏などが、これまでヨムグァン農園の代表者として働いて来たが、パク・スホ氏が代表者として就任した時には、高速道路での交通事故により不慮の死を遂げるという不肖事も起こった。彼等は全て村人たちの真のリーダーとして働いて行こうと努力し、今日のヨムグァン農園を築くまで、多くの労苦を惜しまなかった人々である。その他にも、ヨムグァン農園が一つになるようにと願って祈るナ・ジョンデ氏、クォン・ドンチェ氏、キム・ヨンムク氏、イ・ジョンハク氏など四名の長老を始めとして、チョン・ソンホ氏、キム・ソヘン氏などもヨムグァン農園の発展のために一役担って釆た人達である。

*定着村の枠を抜け出すヨムグァン農園
ヨムグァン農園は子女教育と社会進出のために、既に何軒かがソウルや城南市の都心へと生活の基盤を移している。これまではヨムグァン医院から出る収入があったが、若い層の中では機転を生かして中小規模の個人事業で社会進出に足場を踏まえた人もたくさんいる。また、一九八八年からは主に畜舎を改造して工場賃貸をしているが、それがいろいろと安定的な所得凋仰になっている。このような内部的な変化から見ると、ヨムグァン農園は定着村の枠を越えて、今やあらゆる面において自信を持って一般社会へと進出をして行っているのを確信する事ができる。今だに外からの援助や保護を必要とする老年層もいないわけではないが、経済力が下支えしているために、ヨムグァン農園ではこれまでの定着村という概念ではだんだんと捉えきれなくなって来ているような感じさえある。全国には百余力所の定着村があるが、その全てがヨムグァン農園のようになるのを願っているが、今だに経済的な条件不足からそれを受容できない境遇にある。ヨムグァン農園は今や天の祝福の中に、その全ての物を至らしめている。
しかし、これまでヨムグァン農園を守り、またその中で安定した生描の基盤を得た全ての人々に求めたい事項もたくさんある。毎年、名節や年末の項を迎えると、困難な境遇にいる人々に農場代表者や役員が贈り物を真心を込めて送っているが、これは大変に良い事である。困難な境遇を共に歩いて来た同僚たちの世話をして、彼等を少しでも援助しようとするその心は経済的な余裕からなされるものではないだろう。キリストの愛を実践するために、それまで彼等がいろいろな所から受けて来た愛を今度は逆に少しでも多く施してあげようという純粋な心が、全てに色洩く及ぽされているからである。
困難と苦痛を賢く克服し、経済的な安定と発展を重ねているヨムグァン農園の自慢の種はこれだけではないが、その一方で真実に満ちた生き方に意味を失っている部分もあって不満な点も見受けられる。経済的な安定と豊かさが隣人への真の人間愛を奪い去って行っているというのがその一例である。これまでお互いにまるで一つの家族のような隣人同士として伸睦まじく分け合って来た情愛は、各々がそれぞれの立場から新しく心基盤を切り開いて行こうとする中で、いつしか疎遠な関係へと変わって行っているようである。そして、お互いの生活に対する無関心が、過去の姿を根こそぎ奪い取っている。
このような流れはヨムグァン農園にだけ限った事ではない.京畿道一円の農場がやはり同じように経済生活に自信を持つにしたがって逆に深まっている問題でもある。
しかし、一方ではそれまで一般の人々が抱いていた過去の暗鬱とした定着村に対するイメージがだんだんと変わって釆ているのはとても良い事であリ、ヨムグァン農園もそのために一翼を担っているものと見る。全国にある定着村が一日も早くヨムグァン農園のような安定を得て世の光と塩になって、真実に満ちた秩序と美しい土壌を耕して行けるようになる事を渇望しながらヨムグァン農園の紹介を終えたいと思う。

[原典:「韓星」(韓星協同会発行)、日本語原典:「灯の村」菊池義弘/訳・編]

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