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熊本地裁判決後の経過

5月11日(金)午前: 熊本地裁で「ハンセン病国家賠償訴訟」の判決言い渡し。杉山正士裁判長(異動のため代読)は、らい予防法の隔離規定について「昭和三十五年には違憲性が明白だった」として国の責任を認め、同時に国会の不作為をも違法として、原告百二十七人全員に一人当たり千四百万円〜八百万円、総額約十八億二千四百万円の支払いを命じる。
5月11日(金)午後: 熊本地裁の勝訴を受け、全国原告団協議会(以下「原告団」)の曽我野一美会長らが、厚生労働省に「控訴を断念」するよう求め、全面解決のための要望書を提出。その後「ハンセン病問題の最終解決を進める国会議員懇談会」(以下「議懇」。江田五月会長、百二十二人)にも、「法廃止を怠った国会の責任解明」などを求める要望書(4ページに全文)を提出し、協力を求めた。熊本の原告弁護団は「全面勝訴といっていい内容」と判決を高く評価し、「国は判決を受け入れるべき」とし、また判決が認めた賠償金の仮執行は求めないことも明らかにした。
5月13日(日): 坂口力・厚生労働相はテレビ番組で「人道的に見た場合、患者や家族のみなさんに厳しい過酷な日々を与えたことは、お詫び申し上げなければならない」と謝罪。控訴か否かには言葉を濁した。
5月13日(日): 原告団と全国弁護団連絡会(以下「弁護団」)は勝訴後初の全体会合を開き、国の控訴断念に向け全力を上げることを確認。
5月14日(月): 原告団の曽我野一美会長らが坂口力・厚生労働相と面会。控訴断念を求めた。同大臣が謝罪しようとしたが、曽我野会長は13日のテレビでの謝罪を取り上げ「抽象的な謝罪は受け入れられない。控訴断念なしには、意味がない」と強く主張した。同日、議懇は首相、厚労相、法相と衆参両院議長に控訴断念を申し入れることを決める。議懇は森山法相と面会したが、同相は明言を避ける。
5月15日(火):閣議後、森山法相は「できるだけ早く皆が納得できる解決をしたいが、法律上の問題を少し細かく検討してみなければならない」とマスコミに発言。控訴の可否については明言しない。
5月17日(木): 18日の朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、政府は熊本地裁判決に対して福岡高裁に控訴する方針を固める。国会の不作為による違法等を確定させたくないとの意図。ただし小泉内閣の人気維持や人権重視を掲げる公明党から厚労相を出していることもあって、控訴して和解という方針。一面トップの記事として「控訴方針決定」と出たことで、原告側に緊張感が増す。原告団・弁護団は、21日(月)から抗議と控訴断念要請の実力行動を展開する方針。

「政府は、法解釈等の主張を理由に、控訴し熊本地裁の判決を確定させず、一方で和解を探る方針」と報じられているが、これは条件交渉になれば、療養所での日常的な力関係で圧倒的な優位に立つ厚労省が何とでも出来ると判断しているのが見え見えだ。そのシナリオに乗れば、提訴組と一般入所者との分断や、救済を看板にすべての提訴・告発を一挙に解消し、将来の権利をも放棄させようとするに違いない。そうすれば係争中の残る2つの裁判そのものも空洞化される。政府内でも意見が対立しているように報道され、その際は「官」対「政治」の対立という図式で語られるが、はたしてそうか。政治の側・閣僚は政府部内の工作や説得の前に、様子見で、明確な方針は見えない。一方、野党側は政治対立の軸にしたいという意図がはっきり見える。
5月18日(金)、群馬県が自治体として、控訴せず早期解決に努力するよう求める要望書を坂口厚労相に提出。入所者の平均年齢が74歳を超えることから、人道的な観点から早期全面的解決が必要と。
5月21日(月)12:00: 厚生労働省前、原告団・全療協のビラまき&宣伝。
5月21日(月)15:30: 首相官邸前集合、小泉首相に会見申し入れ。事前に文書で、首相会見の申し入れを行なうために官邸を訪問する旨、通知済みで、また議懇の議員数名から同様の連絡があったにもかかわらず、門を閉ざして取り次ごうとしない。1時間強、座り込みを続ける。
5月21日(月)16:15: 門前で飯島勲首相秘書官が対応し、「集団でおしかけられても困る。首相は忙しいので会えない」と言い、結果的に門前払いとなった。
5月21日(月)18:30〜: 緊急集会、日比谷高校星陵会館。
報道によると同日、福田官房長官は山崎拓自民党幹事長らに「政府として控訴する方針」であることを伝えた。自民党の麻生太郎政調会長が党役員会で、政府は控訴するべきだと述べた。「他の裁判所で同じ結論が出るかどうか分からない」と。
5月22日(火): 午前、原告団が上野公成官房副長官と会見。小泉首相との会見を要請。その可否を23日に回答する旨の返答を得る。午後、第二議員会館で集会。多数のマスコミが詰めかける。官房副長官との会見時、弁護士同席を拒絶される旨、報告。結局、介助のための付き添いという資格で、3人の弁護士が同席を許される。こんなところでも、嫌がらせを受けているのだ。訴訟問題を話し合うのであるから、弁護士が同席するのは常識で判断できると誰でも考えられるが、いろんな理屈を付けて原告側の立場を弱めることばかりをやってくる。会見の要望にいくつもの手続きを踏ませ、何度も要望させること自体、本当の「謝罪の用意」があるなど決して想像できない。
5月23日(水): 午後4時過ぎ、首相官邸で原告団は小泉首相と会見。原告団の元患者9人が約40分間にわたり、それぞれの苛烈な経験や差別と偏見の実態を述べた。会見後、曽我野会長は、希望的観測も込めて、今日の会見を受けて控訴されるとは考えられない、と述べた。16時から、霞ヶ関の弁護士会館会議室で原告団・弁護団の集会。報道等から、今にも控訴決定発表があるとの観測が支配的。
一転、午後6時過ぎ、首相が記者団に「きわめて異例の判断ですが、政府声明を出して、控訴を行なわないことに決定いたしました」と話す。福田官房長官が記者会見で控訴断念について談話を発表すると同時に、おわびを述べた。
5月26日(土): 原告勝訴確定を受けて、原告団と弁護団は「厚生(労働)省と国会の国家賠償責任を明確に認めた画期的な判決は、すべての被害者にとって『人間回復』の歴史的な第一歩となった」という声明を出した。元患者や家族、真の社会復帰ができない退所者や、療養所の納骨堂に眠る約2万3000の僚友、(強制的な堕胎で)生を受けることができなかった3000を超える胎児ら「ハンセン病政策のすべての被害者の人権回復を内容とする全面解決が図られなければいけない」。そのために
1 国の真摯(しんし)な謝罪
2 謝罪広告などによる名誉回復措置と損害賠償
3 療養所の在所保障や退所者支援
4 真相究明と再発防止
5 継続協議の場の設置
等が必要であること。真の全面解決を勝ち取るまで共に歩むことを、すべての入所者・退所者に呼びかけた。
5月26日(土): 新聞報道によると、瀬戸内訴訟の平井昭夫弁護団代表が岡山市内で記者会見し、控訴を断念した政府が発表した首相談話や政府声明は、「判決をゆがめる解釈」と批判。「今は和解や訴訟取り下げを論じる段階ではない」と明言した。平井代表は、「国は責任を謙虚に認め、元患者らに真の謝罪をするべきだ。必要なのは人間回復のための具体的な救済策であり、声明や抽象的な方針にとどまってはならない」と訴えた。

[2001年5月28日]

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