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金新芽長老「その麗しい帰郷」

家族

60年に近い歳月をこの病気の苦しみとその後遺症に苦しみながらも、彼の心と魂の内面は、体が健康な人々よりもずっと明るく、生気に満ちている。

「人間に不幸と絶望を与えるあらゆる生の障害と疾病を創造的に昇華させる時、それはむしろ霊と肉の成長において生命力を育む力として適用するのです。そのような面から、私たちに与えられる全ての規制と圧力は、むしろ神の深いみこころが込められている祝福と言ってもいいでしょう。」

「イエス様は『あなたがたは世の光であり塩である。』とおっしゃいました。このみ言葉が私にどれだけ大きな力になったかわかりません。私は世の中を明るくする光になることができ、腐り行く世の中を腐らせないようにする塩になることができるという確信を持つようになりました。私の表面的な姿がどうであろうとも、私の中には光になることができるという高貴な基があるという事実を自覚させてくれたこのみ言葉こそ、私に矜持を与え、使命感を与え、人生の道を明るくしてくれたのでした。私の中にあるその宝を始めて発見した時は、ちょうど日帝の圧迫の下で朝鮮人という矜持が完全に踏みにじられていた時代でした。その上、難しい疾病が私自身の存在の意味を根こそぎ奪い取って行ってしまった頃でした。」

しかし、金長老は、彼自身の存在の内面に世の中の光と塩という神様が与えてくださった矜持があるので、いったい何が挫折なのかと反問した。

彼が指摘するには、韓国の教会が今日、物質的に豊かになって、教会の指導者たちの社会的地位も以前とは比較することもできないようになったが、純粋な心で主を敬い、讃美する「ホサナという声が聞こえない」と言い、教会の内面はむしろ貧しくなり、教会の社会的評判は地に落ちてしまったという点を認識しなければならないと言う。貧しく、力なき者たちと共にいようとしない教会は、既に教会としての存在理由が消滅するということを、彼はイエス様がおっしゃられた「小さき者」の意味から尋ね出した。

「イエス様のように、困難な中にある人たちのために生きるようにしてください。」

苦難に遭い、病によって家族から離れる以前、教会に通いながら、彼はいつもそんな祈りをした。いまや遠い遠い場所へと離れて来た現在、しばしば人生を振り返りながら、その祈りと彼が生きて来た人生の道途上での予期しなかった出会いの数々に、彼は心を振るわせる。彼はその足跡を記した全ての道程において、幼き頃の祈りの痕跡を発見するのだ。

いずれにしろ、彼が留まったところは、まさに使徒ヨハネの祈りの島であったと言える。黙示録を書き記すために生き抜かなければならなかったヨハネ。その彼が留まった土地を注目する。彼にもその困難な人生を生きるための土地が必要だったのだ。誰かのために祈り手が必要であったとも言うこともできる。彼のいた土地は、まさに兄弟たちのための祈りの土地だったのだ。

最近、彼の日常は日本のハンセン氏病患友たちに向かって開かれている。彼らは去る1996年、それまでハンセン氏病患者たちを隔離するように規定していた法律をなくすことに成功した。日本でハンセン氏病に対する偏見を正しくするために働く団体が勝利に導いたのだった。彼らは法律をなくし、政府に損害賠償金を支給するように訴訟を提訴して勝訴した。日本の療養施設で生活したことがある全ての人々に一人あたり800万円の賠償金を支給するようにしたのだった。この知らせを聞きながら、彼は我が国に居住する人々の中にも過去、日本にいて療養生活をした人たちがいるということを知っており、すぐに、それらの人たちを探すことを始めた。全国の定着村に尋ね求め、これまでに5名の被害者を発見した。そして、日本へ連絡をして、この問題を解決するのに力を尽くした。その彼の努力のおかげで、彼らの痛い過去は、また共に脱ぎ去ることができたのだ。

彼と会っていた時、日本からまた電話がかかって来た。日本語と韓国語を混ぜながら、彼は被害者たちの痛みを説明し、彼らが慰められる道を探すのに心を砕いていた。既に視覚障害は、彼にとってもう障害ではないようだった。眼鏡を越えて、その目が光っているような錯覚までも感じた。

彼の祈りの島についてもう一度考えた。いや、彼の家族たちについてもう一度考えてみた。彼らは、彼の祈りの中にいつも留まっていた人々であると思う。苦難な中にある人々であり、ハンセン氏病患者でもあり、時には、目が不自由な人々、手が不自由な人々、時には、彼の血縁たちでもあった。彼ら全員を含めて、彼の家族たちと言えると思う。彼はそのたくさんの家族たちと共にその地に生きているのだ。

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[原典:月刊「キリスト教思想」2003年3月号、ハン・ジョンホ/記、菊池義弘/訳]

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